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『光の指で触れよ』


ずっと単行本化を待っていた小説が、やっと単行本になりました♪

光の指で触れよ 光の指で触れよ

著者:池澤 夏樹
販売元:中央公論新社
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数年前に読売新聞で連載されていた小説で、すっっごく好きだったんだけど。


他の連載小説はすぐに単行本になるのに、この小説は全然本にならなくて。


それがやっと発行されるというので、速攻アマゾンに注文!


届いてからは、もう何度も何度も読んでいます・・・それくらいスキなのです^^


これは実は前編があるのですが(『すばらしき新世界』という小説です)まだ読んでません(たぶんこれからも読まないかな~^^;)。


でも新聞に連載しただけあって、前編を読んでいなくてもちゃんと理解できるようになっています。


一言でいえば・・・
「手探りと再生」の話かな?


風力発電の専門家である林太郎、その妻で環境問題に関心を持つアユミ、小中と学校になじめず、今は自分で探した全寮制の高校に通う息子の森介、天真爛漫な5歳の可南子(キノコと呼ばれています)。


彼らは、世間から見ればちょっと変わってはいるけれど、でもお互いに理解しあう、仲のいい家族でした。


でも、林太郎が勤務先の若い女性と恋におち、それを知ったアユミはキノコを連れて友人の住むオランダに行ってしまい、家族はバラバラに。


小説は、林太郎・アユミ・森介のそれぞれの視点で語られ、進んでいきます。



メインは、アユミの再生かなぁ。


夫の恋に混乱し、子供を連れてオランダに来てしまったアユミが、このあとどうやって生きていけばいいか、自分はどうしたいのか、子供にとっては何がいいのか、試行錯誤し、その中でさまざまなことを学んでいくのですが。


アユミには叔母の遺産がそれなりにあって、今すぐ生活に困るわけではないのですね。


だから、ゆっくり来し方行く末を考えることができる。


でもそれが逆にアユミを立ち止まらせているというか・・・切羽詰まってすぐに行動を起こす必要がないわけだから、自分にとって本当にいい道はなにかということを、本当にじっくり考えられるし考えてしまうわけですよ。


もちろん、いつかはお金も尽きるわけだから、一生考え続けられるわけでもなく、ある時点で決断はしなくちゃいけないんだけど。


このへんの、少し頭でっかちな感じ、でも衝動的で、感覚的でもある感じ・・・そこに、すごく共感を覚えます。


それから、アユミの気づき・・・夫の恋がきっかけで家を出たのは事実だけれど、実は前々から「家族」という形に疑問を持っていて、夫の恋を口実としてそこから抜け出したのではないか?という気づきも。


何の不満もあるわけではないけれど、でも湧いてくる疑問・・・家族は、「家族」という形でしか集うことはできないのか?社会と自分は、「妻」「母」という形でしかつながりを持てないのか?


もっと、新たなつながり方、形の可能性はないのか?


これも、なんとなくだけど、わかる気がする。


答えを探すアユミは、友人との話題に出たフランスにあるコミュニティに、キノコを連れて参加します。


これがまた・・・この小説が好きになった最大の理由が、この描写かも。


どうやらヨーロッパにはわりとあるスタイルのようなのですが、要するに、考え方の近い人々が、自分たちの暮らしやすい集団を作って生活するのですね。


オープンなものから閉鎖的なものまでいろいろあるようですが。


アユミが訪れるのは、かなりオープンな雰囲気のところ。


エコロジーに関心を持つ人たちの集まりで、自分たちで食べるものはなるべく自分たちで作る、というような方針のもとに共同生活をしてて。


でも別に短期滞在でもOKだし、安ホテル代りに使うもよし、どっぷり暮らすもよし、特別強制される何かもないし、ただ滞在中は皆で助け合って暮らしましょう、的なゆるやかな感じ。


料理や掃除や農作業を手伝えば、滞在費がそれなりに免除されたりもするし、全然手伝わずにお金を払ってのんびり滞在するのもアリ。


自分にできる専門的なことをしてあげるかわりに、何かをしてもらったり受け取ったりすることもアリ。


提供される食事は菜食だけど、街に外食に行くのも全然OK。


・・・これなら・・・滞在できなくもないかな~・・・と思いませんか?


こういうのって、宗教っぽかったり、がちがちに思想で縛られたり、禁止事項がやたらと多かったりするイメージがあるのですが。


でも、ここのコミュニティは、人の流れがあるし、選択権もあるし、自然な形での助け合いや交換がある。


一方的に与えられたり、強制的に強いられるのではなく、お互いに与えたり与えられたり、ほしいものは受け取って、いらないものは断れる。


そして、自分たちで食べるものを作って、食べて、寝る。


「家族を超えるゆるい大きな集団」で、穏やかに静かに暮らすっていうのも、一つの形だよなぁってしみじみ思えるし、いい形だなぁっても思います。


それを実際に選ぶかどうかは別として、ね。


それから、あとに出てくるスコットランドのコミュニティも。


ここはもう少し精神的というか・・・決まった信仰ではなくて、瞑想とか、穏やかに暮らすためのプログラムが確立してる場所。


ここでの描写もとても好きです。


人々が、「互いに評価をしない」という前提の下、穏やかに共感しあって、自分とも他人とも落ち着いて向かい合える場所。


もちろん、暮らしの基本は何も変わらない。


耕し、手入れをし、収穫し、食べ、眠る・・・それを大事にすること。


そこで、アユミが何を見出し、どう変化していくか。


ここから先はほんとにネタばれになっちゃうのでひかえますが(長くなりすぎたし^^;)、なんていうか・・・読んでいる自分もアユミと一緒に何かを見出し、変化していく気持ちになれるんですよね。


アユミのことばかり書いてきましたが、もちろん林太郎も考え続けてるし、新たなものに出会い、変化していく、その過程をも味わうことができます。


とにかく全体がとても穏やかで、深くて、静かで、でも変化していくダイナミズムもあり・・・ちょっと厚めの本ですが、引き込まれればあっという間だし、でも物足りなさはなくて読みごたえはどっしりある。


そんな感じの本です。


逆に、もっと現実味のある、人と人がぶつかりあうエネルギーを味わいたい、みたいな方には退屈かもしれませんね^^;


きれいごとばかりの小説といえばそれまでかもしれないけど、でもやっぱりわたしには、この小説に出てくる登場人物がみなそれぞれに、悩み、傷つき、それでも前に進んでいく、その描写に心打たれます。


ああ、それに、ちょうど食べ物の安全に関する問題が起こったこともあるし、林太郎が出会う人々の「自分の食べるものは自分で作る」「都会は、毎日の食い物が届く保証のないところ。資源と環境の問題を考えれば、何十年後かにどこでもスーパーの棚は空になる。自分の土地だけで一家が生きていける農業を追求したい」という考えも、興味深く読めるのではないかと思います。


とりとめのない感想で恐縮ですが(汗)、興味をもたれた方は、ぜひぜひ読んでみてくださいませ~^^



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★昨日2/4(月)のエクササイズ★              

 本日もお休みなり~

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